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高森明勅
2016.12.31 06:00

高尾亮一氏のロジックは旧時代の遺物

いつまで旧宮内省文書課長だった高尾亮一氏のロジックに
しがみつ
くのか。

天皇の自由意思による退位を認めたら、自由意思による即位辞退も
認めなければならず、
そうなれば皇位の継承が不安定になる、
という言い分。

八木秀次氏などが得意げに振り回しているのを見かける。

実は高尾氏の受け売り。

だが、社会の高齢化もなく、今上陛下の献身的なご努力による
「国民と共にある」
天皇像も未だ影も形もなかった、被占領下の
「旧式」
のロジックでしかない。

昭和天皇のご晩年の長きに亘るご闘病も知らない議論だ。

勿論、明治生まれだった高尾氏は時代的に仕方がない。

だが、それを今も漫然とそのまま援用する鈍感さは、
ただ事ではない。

そもそも、誰も天皇の自由意思“だけ”
による退位は想定していない。

皇室会議の同意を不可欠の要件と考えている。

ならば、高尾氏のロジックは前提から崩れる。

更に、以前から指摘して来たように、今の制度でも事実上、
即位辞退の自由は存在する
(典範第3条。拙著『天皇「生前退位」
の真実』84から87ページ
参照)。

にも拘らず、天皇陛下は“国民の為に”即位して下さった。

その事実に我々は感謝しなければならない。

8月8日の「おことば」に多くの国民が心を動かされたのも、
ご即位以来の陛下のご献身の事実(少なくともその一端)に、
改めて気付かされたからに他ならないだろう。

しかるに、八木氏らの主張は要するにこういうこと。

一旦、退位を認めたら即位辞退も認めなければならず、
そうすると誰も即位しなくなるかも知れない。

それは困る。

国民の自由と安寧を保障する公的秩序を安定して維持する為には、
「心苦しいが」皇室の方々には、油断なくあらゆる自由を剥奪して
おかなければならない。

何しろ、少しでも自由を認めたら、たちまち“逃げ出して”
しまいかねないからだ、と。

何という無礼。

自分たちの自由の為に皇室からは全ての自由を取り上げろ!と、
恩知らずなエゴイズム丸出しの主張をして、恥ずかしくないのか。

しかも、陛下のお言葉に真正面から盾つく不逞さは、
常軌を逸している。

なお一代限りの特例法も、実は高尾氏のプラン。

しかし、リアリティーのない思い付きレベルだった。

それが、憲法との整合性を欠き、強制や恣意的な退位に
繋がりかねないなどの諸点に、
周到に配慮を巡らした形跡はない。

八木氏が高尾氏の退位排除論だけを継承し、
有識者会議は
特例法論だけ
を継承しようとしているようだ
(有識者会議の方向性は、
ヒアリング結果より高尾論によって
決定されている可能性が高い)

どっちも時代遅れの旧式な議論。

歴史のゴミ箱に捨て去るが良い。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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